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生活・人生・生命/LIFE

テラスの写真

幼少より玉川上水や井の頭公園のある緑豊かな武蔵野の自然の中で育ちました。 自然観察を重ね、自然には自然美からなる哲学的な事、道理的な事、生き方の事、自分の在り方とはということを考えるようになり、両親より美術を学び、日常の小さな出来事の中にある尊い幸せや街で人が人らしく暮らすことに必要な大切なことは何かを、考えるようになります。 父の作風である日本画からは日常の尊さを学び、小林古径の作風である線の美しさ、棟方志功の仏教画でもある版画から精神性の豊かさの影響を受けました。

素材の色調バランスや空間構成そして素描(ドローイング)を得意としています。 建築は日本の建築史として重要な数寄屋造りの初期建築でもある小林古径邸を建てた吉田五十八、白樺派を展開した武者小路実篤・有島武郎・岸田劉生、同じく白樺派で民藝運動を提唱した柳宗悦らの影響を受け、高度経済成長前の明治・大正・昭和初期頃のまだ日本人が精神的に豊かだった頃の街並みや日本文化の造詣を深めてきました。 白樺派は、人間の生命を高らかに謳い、理想主義、人道主義、個人主義等の文学作品を通じ、人間肯定を指向した思想です。 日本画家であった父は、エポックメーカーな作家ではありませんでしたが、小林古径を尊敬し、白樺派であった武者小路実篤・志賀直哉らと交流を持ち、作品を通じて素朴な日常の尊い光景を多く描きました。 日常のほんの些細で小さいけれど、とても大切で尊い光景、暮らし、人間の営み・時間・人生・生命そのものを描いた作家でした。 中央線のある三鷹市・武蔵野市・杉並区・世田谷区を中心としたエリアは作家や芸術家ら多くの文化に携わる人が暮らした街でもあり、情緒的な場所もたくさんあります。

こうした文化に影響を与える人が、この街に多かったのはやはり武蔵野の自然が多く残されていてインスピレーションや発想を豊かにする時間を過ごすことができるからだと思います。 そのことが日本の文化に影響を与え、世界に影響を与えていくことにもつながってきました。 この街を考える時、その街にある次世代に受け継がれていかなければならない家や景観に必要なことは、情緒的であるということ、それはタイムレスなものであり、用の美など民藝運動を提唱した柳 宗悦の言葉からロングライフデザインという考えにいたります。 このロングライフデザインという考え方は、新しくつくる家(物)も今ある家(物)も快適に暮らせる家を実現するには、良き感性を持った考える人と具現化していく職人の高い技量が求められます。 素材の質を見極め、人の手によりつくられていく素材調和のある家は、その正しい質の良さが、使うことによって美しさを増し人に親しみと愛着という心を生みます。

この考えは東京だけのものでなく木の文化のあるこの日本の在り方にもとても大事なことのようにも思います。 平成初期を過ぎたころから子供たちが描く未来は近未来的な街ではなく、緑あふれる社会を描く子供たちが増えていました。 平成に入っても続く資本主義が「人を大切にしない社会」や「利益主義の細分化されていく建売や投機的不動産」が人々の暮らしを、本来の尊いものから遠ざけてしまったように思います。 経済優先となっている社会や街はひずみが起き、数々の社会問題やひきこもりなどの人の心の問題が多くなっていたように思います。 経済が拡大しても幸福度には関係なかったこと、日本の幸福度はここ何十年も上がってない事実もあります。平成の日本社会は完全に方向を見誤った時代だと思います。

テラスの写真

よくステレオタイプ的に叫ばれる「景気回復」とありますが、「持続可能な社会」が本当の答えであり、本当に社会や街を良くしたいと思った時、起点でもあり土台でもある地域の不動産(土地・建物)に目を向けると量産的・投機的にあつかう不動産業者が主流で、環境的配慮・コミュニティ形成・建築的視点・文化的視点を持って土地の段階から長期的視点を持って計画をしていく会社がないことに気付きます。 土地や建物に対し地域性や気候風土にはじまり、不動産・金融・税金・デザイン・設計・建築と幅広い領域の視点を持つことで長期的に受け継がれていく個人資産を考えることは、社会の資産を考えることと同義です。 不動産と建築の活動を通じ、人が人らしく生きていく為には、現在の日本(世界)のグローバル型資本主義(中央集権的な経済市場主義)では人権の否定・格差社会・環境の破壊が続きます。

情報化社会の先にあるローカライゼーションにより地域コミュニティが良くなっていくことが荒廃している農地や山の再生へと寄与し、農産物や環境に適したエネルギーの対応が、地域に雇用を生み出し、地域内経済を豊かにし、災害や経済の影響に強い持続可能な社会へと転換していくと思います。 未来の地域社会の在り方に最も必要なものとはと考えると日本には昔から地域に根付いた工務店という素晴らしい文化があるということに気付きます。 既製品ではできない、削いだり整えたりして素材調和というバランスを整えていく作業を行い、居心地の良い建築をつくることや景観の向上を図ることが、地域の街並みとコミュニティを改善させ「暮らしの豊かさ」と「人の心という精神的な豊かさ」へとつながり、人間に与えられた「生活」「人生」「生命」=「LIFE」を良くしていく。

そして人は土地に根付くものであり、何者でもない自分という存在を自ら見つめ直した時、その土地の人間であるということ、その家(家庭)の人間であるということ、そういったことが自身のアイデンティティの礎になっていきます。 「社会にとっての最小単位は個人ではなく、本当は家族だということ。その家族が日常を幸せに過ごせること」を大切に考え、日本人の自然観や風土が生んだ木造建築という文化を現代に合わせリデザインし、美術的視点や情緒的な感覚を持って活動をすることが大事だと思います。 そして「普遍的であること」、「あたたかくてシンプルであること」を大切に、人々の暮らしを考え、日本の風景の一部となる土地や建物を新しくリデザインすることが必要な時代に入ったと思いますし、そうあらなければいけないとも思っています。 私自身も美術の世界だけではなく、リアルに現実としてある不動産と建築を美意識を持ってつなげ、街を考えていくことを大切にできるようにとThinkTownという会社を2007年に立ち上げ、本来の価値を見い出す人間としての使命を持ち、あたたかくて品の良い建築を考え、熟練した職人や制作者らと共に、様々な課題解決をケーススタディとして捉え、数々の仕事を続けてきました。

人が人らしく生きていける為に大切な事は、共に生活をする家族の存在です。 子供にとっては最初のコミュニティーであり、その存在はとても大切なものとなります。 その環境しだいで来来が大きく変わる可能性が社会にはあります。 家族みんなが良い成長を重ねられるように、そして日々を楽しく過ごせるように、そんな住宅 建築を設計から施工まで一貫してつくりたいと思い、この世界に入り27年間活動をしています。 これからの社会に対して重要な事は『人間性の回復と成長』が大切な事であり、このテーマは 私自身の主題でもあります。 皆様の質の良い暮らしが豊かな社会へとつながりますように。

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